交通事故で死亡した被害者が失業者の場合には、その逸失利益はどうなるのでしょうか。
通常、死亡逸失利益と休業損害は同じように扱うことが多いですが、失業者の場合は、休業損害と異なった取扱いがなされます。一番の違いは、収入が無くても損害(逸失利益)を認めるところにあります。(休業損害の場合は収入がないと損害を認めません)
算定の基礎となる収入には、再就職によって得られる予定の収入を基礎とし、その算定には特別な理由が無い限り失業前の収入を参考にします。
死亡の逸質利益の計算では、休業損害と違いその期間が長期に渡ることが多く、交通事故前の現実の収入が将来の収入水準とかけはなれている場合があります。たとえば、次の就職まで賃金の低いアルバイトをしていた場合には、それをそのまま収入とすると将来の収入水準との差が大きくなってしまいます。
そういった時には、「男子または女子の労働者平均賃金」を基礎とします。(ただし、被害者の働く意思とその可能性が必要で、その収入水準を得られる可能性がある場合に限る。)
下記のような事例があります
1)元競輪選手(55歳男性)が引退後3年間は仕事についていなかったが、死亡時には喫茶店開業のため物件を物色していたことから、労働の意思と能力が認められる。しかし長期にわたり無職であったことから全年齢平均賃金の4割相当を認め、生活率控除を50%とした。
2)中学卒業後、資格を得てから一貫して看護士の仕事を続けていた被害者(37歳女性)は事故当時、たまたま看護士として求職中で弁当屋でアルバイトをしていた。このとき、看護婦として勤務していた前勤務先の病院の年収を基礎年収として死亡逸視利益を算定した。
3)無職者(男性54歳9につき、転職を繰り返しアルコール依存症になり、事故当時は生活保護を受けていた。しかし、症状も安定してきて就労意欲もあった事から、平均賃金を得られる可能性は無いが就労の可能性はあるとして平均賃金の5割を認めた。