自賠責保険(自賠責共済を含む)が適用されるのは、「運行によって他人の身体を害したとき」です。では、この運行とはどういう事をさすのでしょうか。
「運行」と、ちょっと聞いただけでは「運転?」と、思いがちです。しかし、自賠責上の運行とは、一般的な運転のみだけならず、かなり広く捉えられています。例えば、クレーン車のクレーンを操作中の事故にも運行とみなされて自賠責の適用があると聞くだけで、その適用範囲の広さがわかります。 これは、なんとか被害者の保護をしたいという、自賠責の理念の表れでもあります。
現在は、この「運行」に当るのか当らないのかについて、いくつもの判例などの積み重ねにより「固有装置説」というのが一般的になっています。固有装置説というのは、自動車の固有の装置の操作も「運行」に含まれると考えることです。例えば、
・ミキサー車のミキサーの回転
・フォークリフトのフォークの操作
・シャベルローダーのシャベルの操作
このような、駐停車中の特殊自動車の特殊装置の操作による事故にも、自賠責保険が適用されます。この他にも
・ドアの開閉
・荷おろし中の事故(場合による)
・牽引走行中
・サイドブレーキの緩みから坂を走り出した場合
・鉄筋の積み下ろしの際に歩行者に怪我を負わせた時
などに、自賠責保険の適用があります。
逆に運行に当らないとされたものは、
・農薬散布中のホースにつまずいて転倒した場合
・移動図書館で転倒し、観覧台の角にぶつかって負傷した場合
・駐車中の車内で、幼児が熱射病により死亡した場合
・故障で路上に駐車後、数時間後に原付が衝突した場合
などで、いずれも自動車の固有の装置ではないこと、運行と相当因果関係がないことを理由に否定されています。