身体的要因で減額が認められるためには、それが疾患、つまり病気でなければなりません。加齢が原因で損害が拡大したとしても、それが年齢と照らし合わせて不相当なものでない限り認められません。
そういったなか、裁判所に損害額の減額が認められた過去の例があります。
1.軽微な事故であるにもかかわらず、治療が長期化している。
2.軽微な受傷であるにもかかわらず、治療が長期化している。
3.痛みに対して過敏な反応をしている。
4.治療で既往症(事故以前からの症状)の治療に重点が置かれている。
5.事故以外のストレスが既往症を悪化させている節がある。
6.既往症が事故を原因として発生している。
7.既往症が合わさって結果を重大にしている
8.これまでに既往症を放置または軽視していた経緯がある。
ただし、人は年齢、性別、性格、人格により様々です。
実務ではこのような素因減額は否定的な見方が強く判断の難しいところです。
ここで、有名な判例をご紹介します。
平成8年10月29最高裁判決では、被害者の首が普通の人より長く、その結果損害が拡大した事件について「普通の人より比べて特異を持つものは、日常生活でも慎重な行動をとるべきだけど、この被害者は普通の人より首が長いけどこの程度では疾患にあたらないよ」としました。
つまり、「一般に負傷しやすく慎重な行動を要請されている人」の場合には、身体的要因による減額が認められるということです。(上記の場合「首が長い」ことはそれに当らないとしました)