交通事故で死亡した被害者が高齢者や年金受給者の時には、若年層の逸失利益の算定方法と比べると違いはあるのでしょうか。
まず、高齢者について説明します。
高齢者でも、有職者であれば通常の損害賠償算定方法に違いはありません。ただ、稼動期間が短くなるくらいです。しかし、交通事故当時収入がゼロだった場合には取扱いが異なります。
収入が無い高齢者の多くは親族の扶養を受けていたり、預貯金の切り崩しで生活している場合が多いです。しかし、中には就労意欲を持っているものも少なくありません。そういった場合には、通常よりも正確な就労の可能性を証明することができれば年齢別平均値を使用します。その他の場合は、死亡時から平均余命年数までの二分の一の年数分の男子または女子の平均賃金を基礎に算定します。
そして、高齢者で家事従事者の場合ですが、その高齢者がどの程度家事を手伝っていたかで分かれます。判例では、下記のとおりに分かれていて未だ基準ははっきりとしていません。
全年齢平均賃金
全年齢平均賃金を何割か減額したもの
年齢別平均賃金
年齢別平均賃金の何割か減額したもの
次に、年金受給者ですが、ほとんどの年金を逸失利益と認めています。しかし、遺族年金についてはあまり認めていない傾向になります。遺族年金は被害者本人の生活保障度が強いという趣旨から、被害者の遺族に対しての利益喪失には当らないからです。(他の年金は本人と親族の生活保障という趣旨から逸失性を認める)
年金の逸失利益の算定には生活控除率の仕方と割合がちょっと違ってきます。過去の事例ですと下記の4種類があります。
1)働いている期間は通常通り算定し、その後の年金収入のみ期間は通常よりも高い生活控除率で算定する
2)働いている期間の後の年金については、年金額よりも本人の生活費のほうが上回るとして逸失利益を否定したもの
3)働いて得た収入と年金収入を別にして生活控除率を算定するもの
4)働いて得た収入と年金収入を一緒にして生活控除率を算定するもの
※1)がもっとも採用率が高い。
判例ですと下記のようなのがあります
70歳の主婦につき、女子全年齢平均給与額を基礎とした
(東京地裁平成8年)
主婦80歳につき、全年齢学歴計の50%を基礎とした
(東京地裁平成9年)
主婦86歳につき、一人で買い物等をこなしていた事から65歳以上の女子平均賃金を基礎に算定した。
(神戸地裁平成8年)
78才女性 年金受給者(年間60万円)一人暮らし
家事は自分で行っていた。この場合、死亡事故の時の
逸失利益はいくらになりますか。お教えください。
事故の内容は信号機のない交差点(横断歩道)を歩行中
前方からの自動車にはねられた。
平均余命からライプニッツを算出し、賃金センサスから基礎収入を求めて本人の生活控除率を50%控除したものが逸失利益となります。
78才女性 年金受給者(年間60万円)一人暮らし
家事は自分で行っていた。この場合、死亡事故の時の
逸失利益はいくらになりますか。お教えください。
はじめまして
72歳の父が横断中に対向車にはねられ亡くなりました。
自営業をしていましたが、100万未満の収入しかなく、年金ももらっていませんでした。(扶養家族は母のみ)
既に任意保険会社の担当からコンタクトを受けていますが、任意保険の場合逸失利益は直前の収入がベースになるものと思いますので、この場合まず自賠責の被害者請求を行って、平均年収をベースにしたもので逸失利益を得たうえで、慰謝料や葬儀費用の差額交渉をすべきかと思いますが、こうした自賠責と任意保険の良い所どりのようなことは可能でしょうか?
何か注意すべき点があればご教授頂けますと幸いです。
自賠責の被害者請求で先取りをしても、任意保険に請求をするときは、自賠責保険金は「既払金」と扱われるので、差額交渉をするときには改めて慰謝料、逸失利益、葬儀費用などを計算し直すことになります。
回答ありがとうございます。
おそらく、慰謝料と葬儀費用は任意保険、逸失利益は自賠責の方が多くなるものと思っています。
この場合、任意保険からの支払いは、自賠責との総額差になりますか?
(任意保険からは、総額差しか支払われないと言われました。)
慰謝料・逸失利益・葬儀費用それぞれについて、差額が請求できることにはならないものでしょうか?
この場合、総額差が任意保険から支払われることになります。慰謝料・逸失利益・葬儀費用が個別に差額請求できるという事はありません。