交通事故で死亡した学生、生徒、幼児の逸失利益については、収入が無くても算定されるのでしょうか。
この逸失利益の問題は昭和39年の最高裁判所の判決により認めることとなり、以後その賛否については争いがありません。
ただ、やはりここでも問題になるのは、その算定方法です。基本的には、全年齢平均賃金または学歴別平均賃金を基礎収入として算定するのですが、これにはそれを得られるかなり高い可能性が無ければなりません。
例えば、全年齢平均賃金(415,400円)が適用される場合の高校生の被害者に、それより高額な大卒の平均賃金(499,400円)は認められにくいということです。(一貫教育の場合には考慮する)
このように、年少者の逸失利益の賠償金算定方法については一般的に、その給与が得られる可能性が非常に高くない場合は、被害者にとってより控えめな算定方法をとるとされています。つまり、収入について疑いがある場合はその額を低めに、支出について疑いがあるときはその額を高めにするという意味です。(最高裁判所判例昭和39年)
下記が裁判例の例になります。
大学二年生20歳の死亡交通事故につき、大卒男子の20~24歳の労働者の平均賃金を使用した。
高校2年生17歳女子の死亡交通事故につき、事故が無ければ短大を卒業していたことが認められるとして女子短大卒20~24歳の平均賃金を使用した。
大学生21歳のい死亡交通事故につき、大卒男子の全年齢平均賃金を基礎にした。
大学生19歳の死亡交通事故の逸失利益につき、女子大卒の全年齢平均賃金を使用した。
歯科大学生の20歳男子の交通死亡事故の逸失利益につき、医療に従事する25歳ないし29歳の大卒男子労働者平均賃金を使用した。
高等学校看護家財学生女子16歳の死亡交通事故の死亡逸失利益につき、看護婦の年収を基礎とし算定した。
高校3年生の男子18歳の死亡交通事故につき、大学進学率の高い府立高校に在学中で共通一次試験の受験手続中で、父母も大学に進学させる十分な資力を有していたとして、大卒の平均賃金を使用し逸失利益を算定した。