運転者の好意により、助手席や後部座席に乗っている同乗者を好意同乗者といいます。またこの状態を好意同乗といいます。
そして、交通事故によって好意同乗をしている者が負傷した場合には、運転者に対して損害賠償ができます。しかし、こういった好意同乗の場合には、「好意同乗による減額」が行われることがあります。
平たく言うと「交通事故を起こすような人間の運転する車に乗るほうが悪い。だから損害額を減額するよ」ということなのですが、少しわかりにくいので、例をあげます。
1.同僚4人で飲酒後、被害者の独身寮まで好意同乗。運転者の無謀な運転が原因で交通事故により死亡。理由は寮の門限が近づいていたためスピードを出していた。
減額率10%
2.友人3名と自宅で飲酒後、無免許で好意同乗をしドライブ。無理な追越、ハンドル操作ミスで交通事故により死亡。この際、被害者両親の監督不足も考慮した。
減額率50%
3.被害者(24歳)が運転者(17歳)と飲酒しながら麻雀をしていたところ、「暑いので涼んでくる」といい、自動二輪でドライブに出かけた。そのとき交差点で相手車と衝突し死亡事故発生。被害者(好意同乗者)は年長であり、ドライブを中止させることも容易であり、飲酒を助長し後部座席に乗りながらも無謀な運転を注意しなかった。
減額率70%
4.共に仕事をした後、同乗者の所有する車両を運転者(被告)が運転中、
好意同乗者は仕事に疲れた運転者に運転を任せっぱなしで、シートベルトも付けずに居眠りしていた。そのときの交通事故により死亡。
減額率20%
5.好意同乗者はアルバイトを終え帰宅しようとしていたところ、運転者(被告)が友人の車と加速性能の競争をしようとしているのをしりつつ被告車両に好意同乗。交差点で樹木に衝突し好意同乗者死亡。
減額率20%
このように、飲酒、無免許、過労、無謀運転をしりつつ同乗した場合に「好意同乗による減額」が行われているようです。
さらには、定員オーバー、眼鏡の不使用、箱乗り、運転に自信がないので同乗を断ったのに無理やり同乗、薬物シンナーを原因として減額した例もあります。
最後に、同乗自体に落ち度がないけども減額がなされた例を紹介します。
1.好意同乗者と運転者が、同乗者宅へ衣服を取りに良く途中に見通しの悪い交差点で徐行を怠って
交通事故。同乗者死亡。
減額率なし。ただし慰謝料が少なくなった。
2.運転者が自分の会社の車を、友人3人とスキー旅行のために私用で使い交通事故。好意同乗者が大腿部切断。同乗者は事故車を友人を介し無償で乗車していたことから公平分担の見地から減額。
減額率30%
3.好意同乗者は運転者との交友関係から無償で同乗。右折時に後方確認を怠り直車に後方より追突された。
減額率20%
これらは、運転者と同乗者との人間関係に基づいて減額がなされたといえます。
しかし、同じような理由でも減額がされないこともあり、いまだもってはっきりしないのがこの「好意同乗」なのです。
原付に2人乗り、後部同乗者がハンドル操作を行っていた時の事故。
好意同乗による減額率は、
思うに「ハンドル操作」とは、運転の事を指すものではないでしょうか。つまり、前に乗っていたものが同乗者という考え方になろうかと思います。